仏像修復には2通りある!
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【仏像修復には2通りある!】


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仏像修復には2通りある!

■ 文化財的修理

修復には大きくわけて2通り、理念の異なった方法が存在します。
1つは文化財的な修理。
基本的に、新補(亡失部分を新しく付け直すこと)や塗りなおしなどは行われない修理です。
西洋から輸入された、ごく新しい修理思想といって良いと思います。
これは、仏像を文化財、つまり、美術品や歴史的遺物として認識し、オリジナルな部分… つまり、当初部分を最優先に保存することを目的とした修理です。
それ以外の新補や加筆などはタブーです。
行政的にはこの考え方から(美術品、歴史的遺物)、 本来、宗教的な遺物である仏像を指定し、保存しようとするわけです。

■ 伝統的修理

もう、一つは、今まで日本で古くから行われていた、伝統的な修理です。
たとえば、金継ぎ。
これは、割れたお椀などを漆で接着した後、割れ目に漆で金粉を固着させ、より、割れ目を目立たせ、 なおかつ、その風情を楽しむ、伝統的な修理方法です。
この修理は、文化財的修理では理解できない修理方法といえます。
この、ある意味、創作的な修理は日本の文化的、歴史的な合意の上で始めて成つ修理といえます。

さて、では仏像修復は?
というと、やはり、大雑把に言って2種類あるといえます。
1つは”美術院”に代表される文化財的修理。(重要文化財〜国宝クラスは美術院でほぼ、修復されるようです。)

もう一方は”仏具屋修理”などともいわれる、基本的に仏師などが新たに仏像を作るような感覚で直す修理です。
ただ、仏具屋修理は”金継ぎ”のように文化的、歴史的合意の上に成り立つ修理というより、 単に仏像制作の伝統的な技法を使った修理というのが正しいような気がします。
基本的に壊れた車を、新品のようにする修理です。
仏像が寺院や僧侶、檀家さんのものだった時代は、単純に壊れた物を綺麗にするという修理で充分でしたし、 また、それが望まれていました。
そして、今でもそう望んでいる人がいます。
「文化財的修理だと修理されたと感じない」…そのように話す人は大勢います。
また逆に、「あんな新品みたいにして!」と話す人も大勢います。

これらの意識のギャップは、どちらが正しい修理か?という問題ではなく、 単にまだ、日本の仏像修理においては修理理念の一本化ができていないという問題だということができます。
同時に、仏像が信仰の対象としてではなく、美術品・歴史遺物として、認識されてきているという証ともいえます。
個人的には、多分、仏像修理が全て文化財的修理によって行われるとしたら、それは、完全に仏教が形骸化した現われと、とらえる事も可能かと思います。


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